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CASE

2021.10.22

地域のカフェを子どもたちの学び場に!郷土愛と生きる力を育む寺子屋の挑戦

CASE 002

寺子屋 学びどき

根市大樹・大村 素子さん

(所属地域:青森県)

根市 大樹
南部町出身。八戸高校から大阪芸術大学を経て、地元新聞社で6年記者を勤めた後に留学。帰国後の2016年に合同会社南部どきを設立。三戸駅前でカフェや燻製加工場の運営、南部町の体験観光コンテンツの開発などを行っている。得意科目は料理やライティング、編集。

大村 素子
新郷村出身。三沢高校から大学進学。震災後にボランティアを通じて岩手県大船渡市に移住し、ラジオ局に就職。その後まちづくり会社に転職し商店街の運営などを担当。2020年田子町移住。得意科目はコミュニケーションとアナウンス。

2021年青森県南部町に寺子屋「学びどき」を立ち上げた根市大樹さんと大村素子さん。
自身が運営するコミュニティカフェの場所を利用して「生きる力と郷土愛」を育む子どもたちの居場所を創り上げるため日々奮闘するお二人に、あしたの寺子屋との出会いや開校に向けた道のり、未来の南部町の子どもたちへの思いを伺いました。

 



目次

 

学びどきが大切にしていることと独自コンテンツ「どきタイム」

 

開校までの道のりとあしたの寺子屋への参画

 

学びどきで学ぶ子どもたちと南部町の未来への思い



 

 

―学びどきが大切にしていることと独自コンテンツ「どきタイム」

|まずは学びどきがどんな場所か教えてください

青森県南部町にある体験型学び舎です。「宿題のサポート」といった勉強だけでなく、「地域密着型の体験プログラム」を通じてたくさんの人と繋がり経験することを大切にしています。
コンセプトとして地域の子どもたちの「生きる力」と「郷土愛」を一緒に育む場所を目指しています。具体的に「生きる力」としては子どもたちが10年後をデザインする力、しなやかに生きる力、ワクワクドキドキできる力を伸ばすこととしています。「郷土愛」についてはオリジナルの体験学習「どきタイム」を通して南部町のことをもっとよく知って誇りに思ってもらえるよう取り組んでいます。

|学びどきの地域密着型の独自コンテンツ、「どきタイム」はどのような取り組みですか?

大村さん)今年の4月から始めていて毎週土曜日に開催している、子どもたちが地域や社会を知るための体験プログラムです。大切にしているキーワードは「子どもたちがドキドキわくわく楽しめること」。南部町の伝統工芸や農業体験理科の実験などなど、色々な体験を通して地域のことを知るきっかけになり、興味を持って学びを楽しめるものを目指して取り組んでいます。

例えば夏休みは南部町の桃園に行く「フルーツ王国で学ぶ&遊ぶ!」を企画しました。桃の種類の違いについて説明を受けてからそれぞれが一番おいしいと思うものをとってその場で食べたり「種類ごとでどう味が違うのかな?」「どうやったら美味しい桃が育つのかな?」とみんなで問を立てて考えてみたりしました。おみやげの桃を貰って帰ってからは学びどきで桃のパフェを作る料理教室も実施しました。そこでは低学年の生徒にも包丁を持たせてみたりして。保護者の方々は少し「え?大丈夫?」というような反応でしたが子どもたちはどんどん上達していって、うまく使えるようになると自信がつくので「二個目切ってみたい!」とか「次はもっと小さく切ってみる!」というようにチャレンジしていく姿を見ることができました。たった半日のプログラムだったんですが、みんな顔つきがすごく大人っぽくなったなっていうのが印象的でした。

|実際に南部町のまちに出て体験する、ということを大事にされているんですね。

大村さん)そうですね、それは先ほど挙げたコンセプトの「郷土愛」に関わる部分です。大人になってこの町から出た時に「自分の地元って素晴らしいな」とか「将来は南部町の力になりたい、関係を持ちたいな」という気持ちを持ってくれたらすごく嬉しいです。

根市さん)小さいころの経験ってどこか記憶にあるんですよね。僕も大学くらいまでは地元に帰ってくることなんて考えていなくて、でもあることがきっかけで小さいころ南部町で遊んだ経験の記憶と今の自分にある関係性にふと気づいたんです。そういうのって誰にでも当てはまるって思っています。小さいころに自分のふるさとで遊んだり誰かと会うっていう経験は一生記憶として残るので、これが将来的な地元への誇り、郷土愛になると考えています。
家の中でゲームしているだけとか、電車に乗って隣町に行って遊ぶというだけで地域活動を経験しないで大人になると、「将来南部に帰ってきてください」と言っても「なんで?思い出もないし」って思っちゃうんじゃないかなって。そういった意味でも、僕たちで地元の人に会えたり、思いっきり地域で遊んだりできるような場所を作ってあげたいという思いが強くあって学びどきをやっています。

|もうひとつとてもユニークな試みとして「大人の学びどき」というのもありますね。こちらはどんなもので、どのような意図でやっていますか?

大村さん)学びどきで開催している、地域の大人を対象とした体験学習イベントです。この学びどきを始めるにあたって周りの大人たちが賛同してくれて、何か力になりたいと言ってきてくれる方がすごく多かったんです。そういう方々が参画して、一緒に学びどきを創り上げていけるような取り組みがしたいと思って始めました。今まではシンガポールの文化と食事を学ぶ”シンガポールナイト”や竹を使った”ぐいのみづくり”を開催しました。
学びどきの思いをもっと多くの地域の大人の方々に伝えるために、実際に教室の雰囲気を見てもらったり、企画に参加してもらうっていうのが最もみんなが楽しめて「もっと見守りたい」「応援したい」って思ってもらえる方法なんじゃないかと思っています。

根市さん)学びどきを開きますとお話ししたときに、「何か手伝えることはありませんか?」と言ってくれたサポーター企業が40社くらいあって、そういう人たちが来てくれてますね。その関係者の中には自分の得意なことを生かして子どものどきタイムで先生になってくれた方もいました。地域の方々との繋がりはこれからもよい関係を続けていきたいです。

大村さん)中学生とかは大人の学びどきに入ってもいいんじゃないかなとか考えたりしてます。カフェという場所を生かして大人と子どもの区切りがない時間も作っていきたいですね。

―開校までの道のりとあしたの寺子屋への参画

|開校までの道のりをお伺いしたいです。まずは教育に興味を持ったきっかけは何でしたか?

根市さん)もともと教育事業っていうのはやったこともなかったし興味もなかったんです。でも自分が親になったタイミングで子どもたちに何を残したらいいか考えていくうちに子育てや教育に興味を持ち始めました。
最初に、地域の人たちと一緒に三戸エキマエヒロバっていう子どもたち向けのイベントを立ち上げました。子どもたちの体験ですとか、学びの要素を入れたもので、1年に4回開催することができました。それが学びどきの始まりです。

|カフェの場所利用は最初から考えていましたか?

根市さん)他の場所も検討したのですが結果的にここが一番良くて決めました。カフェの二階で学びどきをやっていて、一階にはお客さんがいます。もともとこのカフェ「南部どき」も、地域の人がコーヒーを飲みながら気軽に集まれる場所があったらいいなという声に応えてつくったコミュニティカフェなんです。そこに学びどきの子どもたちも加わることで、お年寄りから子どもまで地域の人が繋がりお互い助け合う”結”の精神がある場所になってほしいと考えています。

|あしたの寺子屋とはどこで出会いましたか?

根市さん)先ほど言った三戸エキマエヒロバの取り組みをFacebookで見てくださっていた大谷先生*が「エキマエヒロバを毎日できる環境を創ろう」と声をかけてくださって。そこであしたの寺子屋の取り組みを教えてもらいました。色々とお話しさせてもらって、これからの教育に必要な私たちが「生きる力」と呼んでいるものへの考え方が一致していましたし、大谷先生の教育への理念も知っていたので二つ返事で、参画することを決めました。
(*あしたの寺子屋社外取締役)
そこからもっちゃん(大村さん)と会って、学びどき担当として2021年4月に入社してもらって、開校まで進んでいきました。

|開校に向けて参加したサンカク会議や開校サポートはどのように役に立ちましたか?

根市さん)一番は開校一期生として、他のメンバーと知識とか経験を共有できたこと、そして香田さんの1on1サポートで色々とご指導頂けることが本当に大きかったです。何かを学ぶというのももちろん大事なんですが、その繋がりを生かして困ったときにお互いに頼れるような関係でいられるのはありがたいです。

大村さん)あしたの寺子屋のサポートはオンラインでしか会ったことがないのにもかかわらず親戚のようなあったかさを感じます(笑)行き詰まった時にはいつも「まずは話そう」と声をかけてもらったり、とても助かっています。
他の寺子屋との繋がりで言うと、寺子屋長さんはみんなすごく面白いことをやろうとしていて自分としても凄く刺激になりますね。最近だと、青森県三沢市の寺子屋「商店街のアトリエ」と連携して企画を立ち上げています。せっかく行き来できる場所にあるのでまずはお互いの子どもたちが仲良くなれるようなことから始めて、学びどきの生徒が英語を学びたくなったら商店街のアトリエに行ってみたり、逆に商店街のアトリエの生徒さんがこちらのどきタイムが面白そうと思ったら来ちゃうとか、そういう関係が生まれるとステキだなって思っています。
子どもたちが全国のいろんなところに友達ができて進学や就職等で地元から出る時に行く場所のきっかけになると面白いなって考えたりもしています。例えば「北海道に行こう、花田さんの近くだと安心だなぁ」とか、「京都の大学行くから貞愛さんの焼肉屋さんでアルバイトしようとか」各拠点で頼れるお兄さんお姉さん、お父さんお母さんみたいな存在ができたら子どもたちにとって心強いですよね。

|ゼロから立ち上げる過程で不安になることや心配なこともあったと思います。

根市さん)僕は色々と起業の経験がありますが、コロナの関係で想定外のことが起こってしまう、読めない情勢に対応していくっていうのは初めてなのでとても難しさを感じています。
大村さん)今まで教育に関わった経験がなかったので、これから生徒が増えていったときに自分がコーチとしての役割をしっかりと果たせるかという不安はあります。ただこれは自分で学んだり、やっていく中で感覚をつかんでいくものだと思いますので、頑張っていきます!

|現在抱えている悩みや葛藤は何かありますか?

根市さん)地域の方々から見た学びどきの認識と、自分たちが考えている「こう思われたい」学びどき像のギャップに悩んでいます。僕らとしてはもちろん5教科の勉強も大切ですが、この場所に自由に来て町の人に会ったり地域のことをたくさん学んでほしいと考えて取り組んでいます。ですが地域の人たちにはそのあたりをまだあまり伝えきれていなくて、学びどきは塾なのか託児所なのか、そもそも何を提供して何をやっているかというのは私たちの発信不足もあり、まだ十分に伝えきれていないと思っています。
自分たちが提供したい価値、「生きる力」と呼んでいるコミュニケーションの力や何にでも対応できるしなやかさを学ぶ場っていうのは保護者だけでなくサポートしてくれる地域の方々にも認識してもらいたいので伝えられるよう努力していきたいです。

大村さん)子どもたちとの関わりでも同様にこちら側と子どもたち側で認識のギャップがあると思います。今、子どもたちからは「とりあえず学びどきに行ったら楽しめる」というイベント屋さんのような見方をされていると思うんですね。そのように来て楽しんでもらえるのはありがたいことですが、だんだんと「自分で何がしたいか」「何を学びたいか」ということを考えられるようになってほしいですし、そういう環境を創っていきたいです。家と学校以外の場所で有意義に生きる力を学べる場所になれるように自分が一番がんばらないといけないです。

―学びどきで学ぶ子どもたちと南部町の未来への思い

|最後に学びどきの未来についてお伺いします。まずは今これから取り組んでいきたいことを教えてください。

大村さん)まずは日常的に通っていただける生徒を増やしていきたいです。思いを理解してくれる生徒が増えたらやってみたいコンテンツがたくさんあるのでそのステップに進めるよう、広報活動も頑張っていきます。
根市さん)先ほど言った認識のギャップを埋めていくためにも、スポンサーの皆さんに自分たちの価値を理解していただけるように発信して、ご協力いただける関係をもっと地域に広げていきたいです。

|10年後、20年後の将来的な学びどきのビジョンを教えてください

大村さん)卒業した子どもたちが大人になって、「学びどきで小さなころに○○をしたから○○に興味がわいたんだ」っていうようにその子の人生のピースになれたらいいなと思います。子どもたちが思い出すふるさとの風景の中に少しでも学びどきがあれば嬉しいですね。その子の人生に影響を与える、何かプラスの要素になれたらいいなと思いますし、10年後、20年後にそうなれていたら成功かなと思います。

根市さん)学びどきを自走できるようにしていきたいです。その中で学びどきの卒業生が関わってくれたり、サポーターになってくれる未来を描いています。
直接ここにいなくてもいいんです。東京にいても、大阪にいても、ニューヨークにいたとしても、学びどきに対して「僕らが育ってきた環境だから恩返しがしたい」って思ってもらえるような環境を作っていきたいと思っています。経営者としてはその恩返しとサポートが持続できるような環境を作っていくことが仕事です。


 

 

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